Lの世界の世界 - The L Word

The L Word

~「Lの世界」 の世界 ~ 

 

シビル・シェパード - National Ally for Equality Award 受賞スピーチ

May 2009

毎年 Human Rights Campaign (HRC) より、厳選された人に贈られる “National Ally for Equality Award”。今年は、シビル・シェパード (Cybill Shepherd) と、Johnnetta B. Cole が受賞しました。この “National Ally for Equality Award” は、LGBTコミュニティの向上のために、全身全霊をかけて時間、労力、精神を捧げた人の際立った努力を表彰するものであり、全米の人々の平等のために立ち上がったLGBTコミュニティ外の協力者に贈られているものです。

以下の動画は、5月上旬にアトランタで行われた HRC Gala Dinnerの会場で、この受賞を受けてシビル・シェパードがスピーチをした時のものです。最近、娘のクレメンタイン・フォードがカムアウトしたことで、シビル・シェパードのLGBTへの思いや言動が注目されていましたので、スピーチの内容は興味深いと思います。

シビル・シェパードは、“人権”をテーマに彼女なりの活動をかなり以前より行ってきた実績があり、それにまつわる話や、活動を起こすに至ったその背景ともいえる自身の体験などを語っています。『Lの世界』 の出演のことやクレメンタインのことは、後半で触れています。

■ Cybill Shepherd speaks at 2009 Atlanta Dinner

(0:05)
どうもありがとう。

(0:12)
今晩この会場に来てくださった皆様ありがとうございます。LGBTコミュニティがこれほどまでに活性化しているこの時期にこの賞を頂くのは、実に意味を持つことであります。

(0:25)
マサチューセッツ州、コネチカット州、バーモント州、そしてアイオワ! そう、アイオワ州さえも!

(0:42)
♪あちこちで一斉にゲイが開花しているよ~。 山にも谷にも~♪

(0:51)
素晴らしいあなた方を見ていると、その熱心さや勇気に心動かされ、そういったものを肌で感じていると励まされます。

(1:01)
母と母。父と父。あなた方は、今この世の中で必要とされているペアレンツ(親)のようなものです。

(1:14)
なぜならば、あなた方は子供たちに、平等の権利と真の充足感と真の自由の本当のモラルの価値を伝えていくからです。子供たちは、この世の中で、友達や同級生、そして両親などから受ける憎しみなどは、まるでスポンジのように吸収してしまいます。 しかしあながたのようなペアレンツは、そういった憎しみなどを次の世代に伝えていくことはないでしょうから。

(1:39)
私は、この Human Rights Campaign を大切に思っています。私にとって、とても意味あるものです。素晴らしい団体じゃないですか。

(1:48)
今晩、教育界や公民権におけるヒーローとも言える Johnnetta Cole 先生と並んでこの栄誉を授けられ、実に感銘を受けながらも自分自身が小さく思えてきます。

(2:00)
そのような偉大な女性の面前まで近くに寄らせて頂いた思い出は、過去にも一度だけありました。それは1990年のことです。わたしの故郷であるテネシー州メンフィスの 国立公民権博物館 (National Civil Rights Museum) の階段をローザ・パークス (Rosa Parks) と一緒に上がって、開館式に臨んだ思い出があります。

(2:22)
その日は、John Andrews にお会いした日でもありました。今日また再会することができて嬉しいです。 ということで、それは1990年のことでした。

(2:34)
1968年4月4日。その時、わたしは高校にいました。スピーカーを通して、マーティン・ルーサー・キング牧師 (Martin Luther King) が殺されたというアナウンスがあり、私たちはすぐ家に帰るように言われたのです。学校を出ると、私は街の方を向いていました。Lorain Motel (マーティン・ルーサー・キングが暗殺された場所)まで、たったの3.5マイル (約5.6km) の距離でした。しかし私は悲しみと痛恨の念と恐怖と罪の念に駆られていました。なぜなら、声を上げて正々堂々と意見を述べなかったからです。

(3:01)
つまり、私はその時18歳で、意見することはできたのかもしれませんが、そうしなかったのです。わたしの現状改革主義の芽は、その時から育ち始めたと言えるでしょう。

(3:14)
私は、人種分離政策を行っていた南部の人間です。映画館に行った時のことをまだ覚えています。ちょうど字が読めるようになった頃のことで、私は目にした文字を “White Only (白人のみ)” という言葉として読むことはできました。しかしまだ小さい子供でしたから、その本来の意味など知る由もありませんでした。そこでその意味を父親に訊きました。父は、「それはこの店に入ってこれるのは白人だけという意味で、有色人種は、“Colored People (有色人種)” と書かれたあっちに行くのだよ。」と言いました。

(3:39)
親友の Jane Howard とミッド・サウス・フェアに行った時のことです。フライものの食べ物が並び、アトラクションの乗り物があり、チャンピオンシップを勝ち取った見事に太った美しい豚たちがいました。

(3:50)
あたりを見回して、「黒人はどこにいるの。」とJane に訊くと、彼女は、「そうなのよ。なんか変よね。ここには黒人が一人もいないものね。」と言いました。そこで私たちは、切符切り係のところまで行って、「黒人はどこにいるんですか。」と訊いてみました。すると、「黒人は、ここに白人がいる間は中に入るのを許可されていないのよ。だから、黒人が中に入れるのは週に1日だけ。」との答え。このように私は育ちながら “嫌悪” ということを自然に吸収していたのです。

(4:12)
こういったお話をもう少し続けさせてください。私の初めてのボーイフレンドは ミック・ジャガー に似ていました。私の両親は彼のことを毛嫌いしていました。彼はロック・バンドを組んだミュージシャンで、アゴがないような顔つき。でも私たちはお互い心を奪われていて、いちゃついてばかりいました。

(4:33)
ある日、私は母に、「ママ、生理が遅れているんだけど・・・。」と相談しました。すると母は、「わかったわ。Nade Afferton先生に診てもらえるよう予約をとるから。」と言って、家族ぐるみで友人であるAfferton先生の所に行きました。診察を終わると、先生は「ボーフレンドはいるの?」と訊いてきました。そこで、わたしは「います。」と。

(4:51)
すると今度は、「そのボーイフレンドのことを愛しているのか?」と言うので、私は、「ええ、もちろん。ボーイフレンドのことを愛しているし、結婚するつもり。」と答えると、Afferton先生は、「この紙をドラッグストアにもっていって、毎日このピルを1錠のみなさい。そうすれば生理は普通に戻るから。」と言って、小さな紙切れに処方箋を書いてくれました。

(5:10)
私はラッキーでした。わかりますでしょう。 願っていなかった子供を生まざるを得なくなった女性たちや、世界中のかわいそうな子供たちのことを考えてみてください。

(5:24)
その頃、私はまだ自らアクションをとることはありませんでした。しかし、貧しい女性の中絶を支援する資金拠出が国会で非合法化されると、私がやらなければならないことがついに見つかったのです。さっそく Gloria Steinem (TLW S2ep13出演) に電話して、私に何が出来るか相談してみました。その時、彼女は私に Voters-For-Choice のスポークスマンになったらいいわよ、と勧めてくれました。ということで、スポークスマンを務めました。

(5:44)
ありがとう。 1991年にワシントンで、女性に中絶を決断できる権利をもたらすためのデモ行進を先導しました。

(5:55)
私の家族、私の友人、良き指導者、お世話になった先生、、、 こういった方々の中にも、ゲイやレズビアンの人がいます。 もしこのような人たちがいてくれなかったら、私は今日の私ではないでしょうし、私は今日自分の行っていることをやり遂げるに至らなかったでしょう。それから私の子供たちは、彼らが育ってきたようには育てられてこなかったでしょう。あなた方が非難されるのであれば、私も同じ気持ちでいるということです。

(6:25)
Human Rights Campaign (HRC) は、LGBTの権利を訴える1993年のデモ行進のため、私をワシントンに呼んでくださいました。当然のことながら、私はバナーを持ち、デモ行進を先導するのだと思っていました。

(6:37)
しかし、そこに到着するとこう言われたのです。「違うのです。いや、実は、、、 前にいてもらってもいいんですけど、4人くらい下がっていてもらえますか。それからバナーは持たなくていいです。あなたはゲイとかレズビアンではないですから。」と。

(6:47)
それで私は、「ちょっと待って。私たちが最終的に求めているものは同じはずでしょ? そうなのよ。 マーティン・ルーサー・キング牧師は、肌の色が違うからって、私が彼の隣でデモ行進するのを拒んだと思う?」と言い返し、結局バナーを持ち、デモ行進を先導することができました。

(7:14)
デモ行進の最中、頭のイカれたキリスト教再生派たちが私たちに向かって地獄に落ちろとヤジを飛ばしている所にさしかかった時には、私の後には80万人もの人々が連なり、「恥を知れ! 恥を知れ! 恥を知れ!」と言い続けながら行進しました。

(7:31)
では次に、『Lの世界』の話題にうつりましょう。

(7:37)
まず最初に言わせて頂きたいのですが、実は、私は『Lの世界』のシーズン1に出演したかったのです。しかしどうもその頃、私は必要とされていなかったようで・・・。それでシーズン5になって、やっと私のところにオファーがきた時には、OKの返事を即答しました。

(7:54)
この私の歳で、女として、カメラの前でラブシーンをやったわけですが、それってすごく稀なことなんです。

(8:09)
アイリーン・チェイケンは、『Lの世界』のクリエーター兼プロデューサーですが、ある日、彼女のオフィスでラブシーンについて話していた時のこと。「私はシェーンとラブシーンをしたいわ。」と言ってみました。

(8:22)
アイリーンは、「誰もが最初に言い出すことは、シェーンとしたいってことなのよ。でももっといい考えがあるのよ。レイシャ・ヘイリーはどうかと思って。」 私は「喜んで。」と言いました。「もちろん喜んでやらせてもらうわ。」と。

(8:40)
ラブシーンの途中で、彼女は身体を後ろに引いて、わたしのおしりに力強いキスをしてくれたんだけど、のぼりつめてイっちゃうかと思ったほど。キスのお返しはもちろんしました。

(8:50)
私が初めて出演した『Lの世界』のシーズンの最後のほうで、ジェーン・リンチ、、、ジェーン・リンチ、、、よ。ジェーン・リンチとわたしが、ベットとティナの家のドアをノックし、「私たちこれからデートにいくの。ワクワクするわ。」と言っていくシーンがありました(S4ep12)。台本では、彼女が私に大きなキスをするようになっていたのに、彼女がする前に私がしちゃったんです。私のほうから彼女にキスを。ジェーンは、「ちょっとばかり、荒っぽかったわねぇ。でも良かったわ。」って言ってくれましたけどね。

(9:23)
そして、娘のクレメンタイン。クレメンタイン・フォード。娘は、『Lの世界』で私が演じたキャラクターの娘役をやりました。クレメンタインはラブシーンをしなくてはならなかったので、私に相談してきたんです。もちろん、そしてシェーンとラブシーンをしたわけですが。

(9:46)
彼女はナーバスになっていました。というのも、部分的にヌードになるということだったので、私に意見を求めてきたのです。私はこう言いました。「ヌードシーンなら、若いうちにやっておきなさい!」と。

(10:00)
私たちは共演する前夜、一緒に晩御飯を食べていました。するとクレメンタインが、「ママのことガッカリさせなければいいんだけど・・・。」と言いだしたので、私は「クレメンタイン、ママのほうこそあなたのことガッカリさせなければいいんだけど。」と返しました。そんなことがあってから、あの憤りのシーン、私に腹を立てている娘を私が見つめるシーンを撮ったので、休憩に入った時にクレメンタインのところに行って、「ほんとに私のこと怒ってるの?」と訊いたんです。そうしたら、「ママ、演技よ。 (I'm acting.)」と。お察しの通り、自分の子供だとやはりちょっと違います。

(10:24)
その後、ヌードになるラブシーンを演じる日がやってきました。クレメンタインはノイローゼ気味でした。そこで私たちは撮影現場の外に出て一緒に歩きました。クレメンタインは私の腕を取り、「ママ、私ものすごくナーバスになっているの。できるんだってわかってはいるんだけど。」と言うので、「クレメンタイン、演技なのよ。(It's just acting.)」と励ましました。

(10:43)
娘のクレメンタインが、4週間前にカムアウトをしたのをみなさんご存知のことと思います。

(10:59)
私はとても誇りに思います。これ以上の誇りと喜びなどないくらいです。

(11:10)
あなたに言っておかなくちゃね。クレメンタインは、マッケンジー役で 『Young and the Restless』 に出演しているので、お見逃しなく!

(11:18)
私にはあと二人子供がいて双子なのですが、その Ariel と Zachariason からも皆様によろしくと言っていました。二人からの愛と、皆様を応援する気持ちをここでお伝えしておきます。

(11:28)
個人的な経験からですが、人の考え方を変えるには、人の心に触れなければなりません。

(11:34)
『Lの世界』に出演したことによって、実に多くの人たちにお会いできる機会がありました。とりわけ、深みのあるキャラクターと彼女たちの人生を描いたレズビアン主体のテレビドラマを見ることができて、大変嬉しいと言ってくださる女性たちに、数多くお会いすることができました。

(11:51)
空港で私の方にやってきた12人ほどの女性たちは、私が『Lの世界』に出ているから、夫がドラマを見るよう勧めたと言っていました。

(12:00)
そのように、『Lの世界』を見たことによって、初めてLGBTの人々のことを知ったという人たちにも会ったわけです。彼女たちは、弱さも強さも感情も持ち合わせた人間であり、彼女たちの心も少々開いたのが伺えました。

(12:14)
そういった仕事をこれからもしていきたい。私もやっとみなさまに近づけたようです。

(12:25)
そんな風に関わっていきたいと思っています。やるべきことはたくさんあります。ヘイトクライムに関する法の合法化のために大統領に署名してもらわなければなりませんし、“description (描写) のない” 雇用均等法についても動き始めなければなりません。

(12:41)
あら、“discrimination (差別) のない” 、、、と言いたかったのです。
“description (描写) のない” では、どうしようもないですものね。
“discrimination (差別) のない” です。  ハハハハハ・・・。

(12:50)
私たちにはやるべきことが山ほどあります。あなた方を支持し、一緒に前に進んでいけることを誇りに思います。もう長い間同じ気持ちでいるのです。常にあなた方を支援し大切に思っています。かけがえのない賞を頂きありがとうございました。

シビル・シェパードとクレメンタイン・フォード
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