ドラマの冒頭では、何一つ順調にいっていることなんてなかったジェニーだが、シーズン1で、恋人のティムを裏切りながらも身を焦がしたマリーナとの恋が破局した後は、作家への道を志し、夢を叶え、思い上がった女になった。シーズン4では、文芸評論家への復讐のため、獣医をしているその文芸評論家の彼女を誘惑したりした。その獣医に接近する手段として、安楽死を依頼するための犬を引き取ったりした話題をまずは持ち出したくはないが、簡単に言うと、ジェニー・シェクターは人を引き付ける人物ではない。しかしだからこそ、女優ミア・カーシュナーはジェニーというキャラクターに魅力を感じているのだと言う。
そして “Prisoner Cell Block H” の Vinegar Tits に続く最も嫌われるレズビアンを演じきる挑戦を楽しむのだという彼女に敬意を表したい。 それだけではない。バンクーバーの撮影現場で時間がある時には、アジアに存在する強制移住者たちの認識を高める本を執筆している。そして、その収益をアムネスティ・インターナショナルに寄付する計画だ。好意を寄せている慈善活動は何かと訊ねたら、すぐに国境なき医師団(MSF=Medecins Sans Frontiers) だと応えたミア。ミス・ミア。フェミニスト、慈善家、この表紙を飾っているスターである。
Q: 「Lの世界 (The L Word)」の大成功と世間での認知が広まったことには驚いていますか?
ミア・カーシュナー (以下、ミア): ドラマは初め、一部の人たちの間でのヒットだったわ。そして女性のゲイ・コミュニティの人たちが見るようになって、それから何年か後にはますます世間で知られるようになった。この「Lの世界」のドラマのおかげで、フランスでも突然わたしだと気づかれるようになったのよ。それまで一度もそんなことなかったのに。「Lの世界」は息の長いドラマになりそうね。
Q: では、あなたは今、レズビアンの象徴ってことかしら?
ミア: ジェニーは違う。彼女はレズビアンの象徴ではないわ。だってジェニーというキャラクターは二面性をもっているし、精神的な混乱状態も抱えていて、ゲイ・コミュニティの人たちから全然愛されていないもの。
Q: スクリーン上で女性とキスをするのはあなたの幻想だったと言う引用文がありましたが・・・
ミア: そんなこと一度も言ったことないのに。いずれにしても、カメラがまわっている時には、女性とのキスは男性とのキスと何ら変わりないわ。映画ブラック・ダリア(The Black Dahlia)のシーンで、わいせつ的な荒々しい女性同士のシーンを見たでしょ。あれはなかなか難しかったのよ。俳優なら、セクシャル的な内容に関して常に懸念を感じているもの。搾取的に見られたり、いんちきくさいとみられたりすることは、一番避けたいことだから。表に出る映像より、実際はるかに長く撮影しているのよ。とにかくあの撮影は屈辱的だったし、そのシーンの途中で放り投げだしたりもしたわ。撮影中、不愉快だったし、心穏やかでいられなかったもの。
Q: ドラマ「Lの世界」の撮影スケジュールはどうなっているのでしょうか?
ミア: 1年のうち5ヶ月は撮影に入るわ。撮影が終わったら旅行に出かける予定。2007年は、1ヶ月間スリランカに行っていたのよ。その前はマリ共和国に1ヶ月。だから残念だけど、他の仕事をする時間の余裕があまりないの。
Q: 契約はどのくらいしているのですか?
ミア: 5年。そんなわけで映画監督と一緒に仕事する機会はほとんどなくなってしまったわ。ただこなすだけの仕事ならする必要ないし、ドラマの出演料はいいから、いい仕事の話がくるのを待てる。うぬぼれた女だなんて思われないようには何て言ったらいいのかな・・・ 女優として思うに、自分を高めてくれるような人と一緒に仕事をしなければ、自分の可能性にとってはマイナスになるってことだと思うのよ。もちろん、もっと映画や他の仕事をしたい気持ちは十分にある。わたしの経歴書を見ればわかると思うけど、映画を何本もやっていたのに何の意味もなかったっていう暗澹とした時期があるの。まぁ意味はあったのだろうけど、それだけの映画をやったことで女優として力がついたともいえないし、私自身ハッピーではなかった。この業界で若くして仕事を始めると、残念なことだけど、誤って選んでしまったような役柄もすべて経歴書に載ってしまうの。でもそんな経験も大事よね。自分がしたくないものが何かわかったわけだから。仕事をしなくても経済的に食べていけるなら、ただの仕事のために仕事をするなんて意味がないし、ただの行き詰まり。仕事を請けるのを止めたから量は減ってきた。もっと興味深い役が欲しいからね。
Q: 何年仕事を請けていないのですか?
ミア: もう2年も請けていないわ。この5年でやった仕事は、「Lの世界 (The L Word)」と「24」と「ブラック・ダリア (The Black Dahlia) だけ。
Q: どうやって生計を立てていたのでしょうか?
ミア: 「Lの世界」よ。俳優業をやるならお金に関して賢くあることは大事なこと。「ブラック・ダリア」は、また映画の仕事をもっとしたいって、私をやる気にさせてくれたの。だから次はトレーニングを積んできた映画の仕事をやるつもり。
Q: LAに引っ越すのはワクワクしましたか?
ミア: LAは嫌い。フォーシーズンズホテルから通りを隔ててすぐのアパートに住んでいて、台本を読んだり、オーディションにでかけたりしていたけど、最悪だった。
Q: 今まで一風変わったオーディションを受けたことは?
ミア: 一つか二つあるかな。一つ感情的なシーンのオーディションを覚えているわ。私の演じるキャラクターの母親が亡くなったというシーン。わたしはそれをとってもシリアスに捉えて、うまく演じられたと自分自身とっても満足だったの。でもその後、エージェントから電話があって、「オーディションでどうしたの? ディレクターがあまりにも現実的すぎるって言ってたよ。」って。それでわたしは、「それどういう意味? あまりにも現実的すぎるって? それが女優に求められているものじゃないの?」と返すと、そのエージェントが、「あなたはもうこれ以上できないわ。もう話さなくていい。誰もあなたが頭がいいってことや、何か言いたいことがあるなんて聞きたくないんだから。」と言ったわ。わたしはただ、「やってらんないわ。」と思ったけど、それがきっかけでこの業界から少々身を引き始めたわけで、だから最近そんなに仕事をしていないのよ。
Q: では、LAではかなり孤立していたわけですね。
ミア: とっても孤独だった。友人はいないし、トロントでの生活は活気に満ちていたからなおさら。それで自分はこのままではだめだと思ったから大学に通ったの。
Q: あの聞こえのいいマギル大学(McGill University)ですよね。カナダでトップの・・・
ミア: そう。でもあの大学ってそうなの? とっても控えめな大学だと思うけど。
Q: その後アメリカに戻ってきてどうですか?
ミア: トロントとロサンゼルスで過ごす時間をはっきりと区別して、ロサンゼルスでの時間をできるだけ短くしたの。ロスは好きじゃないのよ。