ドラマ 『Lの世界』 の最終シーズン6の放映も半分が終わった。このドラマの熱狂的なファンたちは、「誰がジェニー・シェクターを殺したのか?」という疑問を抱えているだけでなく、テレビ界の展望として 『Lの世界』 が終わった後の代わりになるものがないという現実に悲嘆している。ベット、ティナ、シェーン、アリスなど、ウエストハリウッドの魅力的な人物像が頭をもたげる以前、チャンネルを次々と変えては数々の番組を見ていたような若いゲイの女性たちは、ストーリーの中で二の次だったり、ただのジョークのオチとして使われていたような主としてセックスとは無縁な無味乾燥のレズビアン像に飽き飽きしていた。そのような状況の中、筋金入りのハリウッドのレズビアン事情通であるアイリーン・チェイケン氏がテレビドラマのベンチマークを作り上げてくれたのだ。
レズビアンの認知度においてチェイケン氏やドラマ 『Lの世界』 の影響がどれほどのものかというと、現在サンセット・ブルーバードに掲げられている広告看板 (上の写真) を見れば一目瞭然であろう。口をポカーンと開けて唖然としてしまうほどセクシーなその広告のせいで、もう何台もの車がフェンダーがへこむ程の追突事故を起こしていそうである。LAの空をバックに挑発的なスローガン “Going Down in History(※)” と共に、『Lの世界』 のゴージャスな8人のキャストメンバーたちが、黒いランジェリーを身に付け、様々なエクスタシーの中で陶酔している。 (※ “Going Down in History” = 「歴史に残る」に、 “Going Down” = 「オーラルセックス」の意を掛け合わせた挑発的スローガン)
『Lの世界』 は、2004年に初のお目見え以来、レズビアンの試金石となっている。ウエストハリウッドの仲間たちが、恋した愛した、笑った、争った、泣いた、あからさまで現実的な女性同士のセックスをした・・・、といったようなこの上ない驚きの連続をこぞって日曜日の夜に見始めるレズビアンたちの試金石である。この番組が始まって以来、ファンたちは、好奇的であったり、強く非難したり、好きになったと思えば嫌いになったり、目の保養ともとれるキャラクターたちを否定したりしてきたが、そういった議論を受けやすいドラマでもあった。
そのようなドラマでありながら、ドラマの支持者にとっても反対派にとっても同じように議論するに及ばなかった点は、このドラマ 『Lの世界』 が、テレビの世界で、またポップカルチャーにおけるさまざまなエリアで、レズビアンの認知度に重大な転機を及ぼすほどの貢献成し遂げたということである。
ドラマシリーズとしての 『Lの世界』 が終わりに近づくに伴って、ファンの心の中にはジェニー・シェクターのミステリーはさておき、さらにもっといろいろな疑問がある。このドラマの立案者、チェイケン氏に、ジェニーに関する質問やこのドラマのこれまで6年の流れ、そしてレイシャ・ヘイリーのスピンオフのことなどを語ってもらった。それから、L Word 映画のことも!
Q: 今日は私たちのために時間をとっていただいてありがとうございます。お忙しい方だというのは重々承知なので、早速本題に入りましょう。いよいよこれで終わりなんですね?
アイリーン・チェイケン: そんなふうに捉えたくはないわ。
Q: (笑) わかりました。では、シーズン6の最後にキャラクターたちの行く末については、満足しているのでしょうか?
アイリーン・チェイケン: (含み笑いしながら) うーん・・・。 わたしがキャラクターたちの行く末について満足しているか・・・? うーん、そうねぇ、ストーリーについては満足しているし、何人かのキャラクターについては満足している。でも中には人生を台無しにしてしまうキャラクターもいるわ。
Q: そうですか。実社会もそんなものですものね。
アイリーン・チェイケン: そうね。
Q: では、何よりも要となる質問だけど、だれがジェニー・シェクターを殺害したのでしょう?
アイリーン・チェイケン: (笑)
Q: それから、なぜってことも・・・。
アイリーン・チェイケン: えーっと、なぜ誰かがジェニーを殺したかってこと?
Q: どうしてプロデューサーの意図としてジェニー・シェクターを殺さなければならなかったのかということです。
アイリーン・チェイケン: シーズン全体がこの質問に答えを出すために捧げられていると思うので、もし今ここで私がこの質問に答えたとしたら、それはこのドラマに対して仇をなすようなもの。つまり、シーズン全体を通して答えを知りたいと思うように作られているのよ。
Q: 確かにそうですね。
アイリーン・チェイケン: もっともらしい返答ならできるけど。「いいストーリ-だから。」 と。
Q: それは、もちろん。
アイリーン・チェイケン: これについてはベラベラしゃべりたくないの。だって、キャラクターのことを本当に大切に思っているし、そんな安易に決断を下しているわけじゃないのよ。
Q: そうですね。この質問に答えるためには、プロット全体を明らかにしなければならないのですからね。でも私の考えでは、、、 もし間違っていたら訂正していただきたいのですが、いろいろな意味でジェニーというキャラクターは、あなたのパーソナリティに近いといったようなことをもうずいぶん前に読んだことがあるのですが。
アイリーン・チェイケン: 私のパーソナリティではないわ。私はむしろ・・・
Q: つまり、分身といった類のものなのかどうか・・・。
アイリーン・チェイケン: 言うなら、ジェニーの人生の細かい部分は、もう少し私の人生を映し出してるといったところかしら。ジェニーに関することで、確かに私にも言えることがいくつかあるの。それは、私たち二人とも小柄で、ユダヤ人で、作家だということ。
Q: (笑) そうですか。
アイリーン・チェイケン: 確かに自分はかなりジェニーに似ている。でも、パーソナリティについて言えば、まったく違うと思う。ジェニーが人々の間で嫌われ役のキャラクターになっているようだからって、私たちが視聴者を喜ばせようとジェニーを殺したのだと思う?
Q: そんな風に疑問を抱いているファンもいると思います。
アイリーン・チェイケン: そういったことを考えなかったわけではないけれど、無意味なことよ。最終的には、真実味のあるストーリーとドラマティックな真実を伝えようと努力したわけだけど、今からさかのぼって6年間も関わってきたこのドラマの実情に即して筋を通したわ。
Q: ジェニーに関しての質問です。あなたが今シーズン伝えようとしているストーリーはジェニー絡みのものが多いようですが、ジェニーというキャラクターを作り上げたときに、嫌われ役になるだろうということはうすうす感じていたのですか?
アイリーン・チェイケン: いいえ。
Q: ジェニーというキャラクターを作り上げることは大変でしたか?
アイリーン・チェイケン: いやいや、非常に面白かった。私は勇気ある選択をしてくれたミア・カーシュナーを褒めてあげたい。ジェニーは、ドラマのファンになってくれた多くの女性たちの怒りを買うような何かを持ち合わせているのだと思う。もともとは、ジェニーをもっとコンプレックスの少ないキャラクターとして心に描いていたの。でもミアが作り上げたジェニーというキャラクターは、私の想像をはるかに超えて興味をそそるものとなったわ。