Q: 個人的なことですが、私はずっとジェニーのファンです。彼女の一番最悪な時期でさえファンでした。というのも、ジェニーというキャラクターは、レズビアンコミュニティの必ずしも常に精神的に安定しているわけでなないという多くの人々を鏡で映したような存在だからだと思います。実際私も、時にはジェニーのようだったり、時にはジェニーのような子とデートしたり、ベットタイプよりジェニータイプのほうが出会うことが多かったです。
アイリーン・チェイケン: それはわたしも同感。人々があれほどまでに強くジェニーに反応する理由の一つは、私たちの心の中にもある、胸にしまっておきたいとは言えないような部分を見せてくれているからだと思う。
Q: まさにそう思います。話が戻ってしまいますが、電話でお話ししているついでに、これだけは訊いておきたいことがあって。ジェニファービールスとパム・グリア、2つの異なった時代を象徴するこの二人の女優たちを姉妹として起用したのは、実に素晴らしいキャスティングだったと思います。これは、あなたのアイデアだったのですか? それとも、ドラマとして偶然そうなったのですか?
アイリーン・チェイケン: ドラマが出来上がっていくまでの流れをご存知かどうか知らないけれど、最初のキャスティングではその二人は姉妹ではなかったの。オリジナルのパイロット版では、その二人を姉妹として撮影はせず、その中でキットは全く違ったキャラクターで、ベットの姉ではなかったのよ。そのパイロット版を見て、Showtimeはドラマを買ってくれたけれど、こんな風に言ったわ。「よし、これをやろう。このドラマをシリーズものにしたいけど、パイロット版の中でうまく作用していなところが何点かある。その一つがキットというキャラクターだ。」と。パム・グリアに出演してもらいたいというのは全員一致の意見だった。でも、どうもミスキャストかキットというキャラクターの構想が不十分だったみたいね。この編成の中でキットという立ち位置をどうすればいいのか、と考えながらパイロット版を見ていたら、ベットとキットの素晴らしいシーンが一つあったのよ。それは、あるべき二人の関係を呼び起こしてくれ、私はそのシーンを見た時に、「二人を姉妹にしよう! キットをベットの母親違いの姉にして、この編成の中で唯一のレズビアンではないキャラクターにしよう。」と提案したの。これが、ベットとキットが姉妹になった経緯よ。
Q: その話は知りませんでした。ありがとうございます。先ほどミアとジェニーのことについてお話されたように、女優さんたちは、ストーリーやキャラクターに息吹をもたらしてくれるのですね。確かに、最初に心に描いていたものとは違った軌跡をたどっていってしまうようなことはありますよね。昔を思い出してみて、他にも驚いてしまうような予期していなかったキャラクターの軌跡などありますか?
アイリーン・チェイケン: たくさんあるけど、多すぎて・・・。
Q: いつくかお話してもらえますか?
アイリーン・チェイケン: 当初、シーズン1の最後か、もしくはシーズン1ではなくシーズン2のどこかで、ベットとティナの関係を過去のことにしてしまうつもりだったの。二人がヨリを戻すことなんて考えていなかった。
Q: そうだったのですか。
アイリーン・チェイケン: 二人にはそれぞれ新しい関係を築いていかせようと思っていたから。その他には・・・、何かが起こってストーリーを決めざるを得なかったこともあるわね。例えば、ローレル・ホロマンの妊娠とか。
Q: それはそうですね。
アイリーン・チェイケン: この問題をどう切り抜けようか、どういったストーリーに仕立てようかって、みんなで知恵を出し合ったのよ。
Q: 私がこのドラマで好感を持っている点が、前回のシーズンではハッキリと打ち出されていました。このドラマは常に現実を認識をしているところが、私は好きです。特に、『Lez Girls』 で深く強調されていました。あれは、あなたが常に持ち合わせている何らかの認識を描いたものなのですか? 自分自身の再帰性といった類のようなものなのでしょうか?
アイリーン・チェイケン: 確かにこのドラマはものすごく “メタ” だって気づいていたし、具体的なストーリーを語ったらさらにそうなるというのはわかっていた。私たちはハリウッドに住む裕福な女性たちのストーリーを描いてきたわけだけど、その中に映画産業に携わっている人が一人、二人しかいないということは、もうそれだけですでにフィクションなのよ。つまり、現実的にロスの裕福なビジネスウーマンを描くならば、映画産業で働く人がもっといるべきだということね。
Q: 確かにそうですね。
アイリーン・チェイケン: ある時点で方向性は決まって、あとはそのまま進行させたって感じね。
Q: レイシャ・ヘイリーのことというか、“アリス” のスピンオフのことについて少々お訊きします。今どういった段階なのか、何かお話していただけることはありますか?
アイリーン・チェイケン: スピンオフについて言えることは、すごくエキサイトしているってことくらいかな。次の新しいドラマで、レイシャと一緒に仕事をすることも、アリスと一緒に仕事をすることも、どちらもスリリングなこと。
Q: そうですか。パイロット版はもう撮り終わったのでしょうか? 12月に撮影をされていましたよね。
アイリーン・チェイケン: パイロット版の撮影は終わったけれど、まだ完成していないので、内容についてはまだお話できる段階ではないわ。
Q: では、ジェニーと誰が彼女を殺したのかということについてですが、そのことに絞ったマーケティングはされてきているのですか?
アイリーン・チェイケン: それは、Showtimeがすでにマーケティングをしていると思うけど・・・。
Q: ボードゲームみたいなものとか。要するに、“The Who Killed Jenny Shecter game” なんていうのは?
アイリーン・チェイケン: そんなボードゲームをだれかが作ってくれるなら、それは嬉しい限り。
Q: すぐにそういったものを作ってくれるレズビアンが出てくると思いますよ。
アイリーン・チェイケン: そんなゲームには、“Lesbian Bed Death (※)” みたいなのも、盛り込まなきゃね。
(※ “Lesbian Bed Death” = 長く付き合っているレズビアンがセックスレスになる状態のこと。)
Q: もちろん。
アイリーン・チェイケン: それからボードゲームなら、色々なタイプのまわり道も。
Q: おもしろいわ! この電話が終わったらいろいろ検討してみます。あまり長くお時間をとらせたくはありませんが、、、。 アリスのスピンオフの他に、何か始まっているプロジェクトはありますか?
アイリーン・チェイケン: 今やっていることで手がいっぱい。まだドラマ 『Lの世界』 にも取り組んでいる最中なの。まだ終わっていないの。まだドラマのすべてをみなさんにお届けしていないのよ。
Q: わかりました、わかりました・・・。
アイリーン・チェイケン: まだ最終シーズンを編集しているところ。そしてスピンオフのことも進めている最中。それから検討中のことも他にいくつか抱えているわ。でも今、とってもいい感じよ。
Q: そうですか。アリスがスピンオフにでるというのは明らかですが、現在放映中の最終シーズンはもの悲しいストーリーになるのでしょうか?
アイリーン・チェイケン: ほろ苦いって言ったらいいかしら。言っておくけど、これで 『Lの世界』 が終わりだとは思っていないの。何らかの形で 『Lの世界』 を取り上げていくことになると思う。 具体的にはまだわからないけど、L Word映画を作るとか・・・。
Q: そうであってほしい! 劇場のスクリーンで全員見ることが出来たら・・・。
アイリーン・チェイケン: 私もそう思うわ。それに一緒に仕事をしてきたキャストたちも映画化を望んでいると思う。 いま映画のことは常に頭にあって、今後落ち着いたら、それをどういった形にするか、そしてそれを実現できるかどうか答えを見つけ出すつもり。『Lの世界』はまだ終わってないわ。
Q: まったくその通りですね。この他に、ドラマのことやシーズン6のことでお話されたいことはありますか?
アイリーン・チェイケン: 特にないけれど、最終シーズンが、これまで何年もの間ドラマを愛し応援してきてくれたすべての人たちにとって無理なく満足できるものであり、誰もが大いに楽しめるようなシーズンになってくれたらと思っているわ。
Q: 絶対にそうなりますよ。
< Previous 1 2