Lの世界の世界 - The L Word

The L Word

~「Lの世界」 の世界 ~ 

レポート&インタビュー: L5 コンベンション - Blackpool, UK -

By the article from tibette.com
November 2008

Q: ジェニファーへの質問。シーズン2の fuckin' dwarf とのシーン (S2ep3) について。
(※fuckin' dwarf = 車で衝突事故を起こした時の相手ドライバーのことをベットが悪く言った呼称。あえて訳せば “クソ小人オヤジ”。)

ジェニファー: あのシーンを撮るのはとっても楽しかった。演じるということにおいて最も素晴らしいことの一つが、実世界では決してありえないような最高にかっこいいことができてしまうということ。男兄弟がいるので、男性と喧嘩するのは全然問題ない。背の低いオヤジを演じたその男性の演技は実に素晴らしかったし、あのシーンにハマリ役だった。ベットはキマってしたし、その哀れなオヤジに抱えているすべてのフラストレーションをぶつけている。時々、口げんかの時にベットを後ろのポケットにしのばせておけたらなぁと思う。彼女はそういう状況で負けないからね。

Q: ジェニファーは、ベットの役作りのためにどんな準備をするの?

ジェニファー: 最初の何シーズンかは実に潔癖なほど準備をしたけれども、月日が経つにつれて簡単にさっとベットに変われるようになって、何も準備する必要はなくなったわ。シーズン1のシーンで、ティナが流産をしたとわかって家に戻ると、展覧会の反対派が家にまでやってくるシーン (S1ep9) があったでしょ。読んだそのシーンの台本には、家にやってきた反対派の女性役のエキストラは、ベットが家から出てきて帰ってくれと言ったときに、そこから立ち去ることになっていたのに、本番でベット(私)が帰ってくれとセリフを言っても、そのエキストラの女性は動かなかったのよ! その場面で後ろに下がっていくんだよと、誰かがエキストラに言い忘れたかどうかなんて知らなくて、その時にベットの気持ちや強い感情を投影してしまい、そのエキストラの女性を芝生の上から追い出すのに、本気で押しはじめてしまったこともあった。幸いそのシーンの出来ばえは素晴らしく、でもそのあとで彼女に押してしまってごめんなさいと謝ったわ。もちろん許してもらえたけど。

Q: セックスシーンの撮影は、どこまでが台本通りで、どこからがローレルとジェニファーの相性によるもの?

ジェニファー & ローレル: 肉体的なシーンは、いつもかなり細かいところまで計算され尽くしているのよ。でもセックスシーンはただセックスだけ、というようなところはほとんどなく、エモーショナルな部分で常にその奥には深い感情があるもの。そういった感情とは、たいてい 「“傷つけられた” か “仕返し”」、「“脆弱” か “優勢”」、そして 「情熱」 とか 「喪失感」、といったもので、肉体的な演技を通してその時の感情を伝える最良の方法を見つけ出すためにも、撮影前に自分がどうあるべきか考えておく必要があるわね。相性については、それって意識レベルで作り上げるものではないでしょ。私たち二人の間に、何かがあるみたいってとこかしら。すべてのシーンで100%の力を出し切っているから、そういう結果が出るのでは。

ローレル: ジェニファーと自分はいい関係にあるなと初めて感じたのは、パイロットエピソードで3Pの途中で男性を追い出した後のシーンの撮影が終わってカメラトラックにいた時に、監督が今撮ったシーン見てみる? と訊いてきたので、そうね、と言って見てみたら、その出来がすごくよくって。それが最初。

Q: ローレルはティナの、ジェニファーはベットのどんなところがすごいと思う?

ローレル: わたしは、ティナの我慢強くてしとやかなところが好き。ティナはシーズンを通して変わってきていて、プライベートでも仕事上でも強い人間になってきている。そんなところも好き。

ジェニファー: ベットの頑強なところと、友人たちに誠実なところ。時には彼女の公正さなんか大好き。シーズン6のベットは今までの中で最高ね。今まで以上によく笑っている。

Q: 「Lの世界」での役が決まった時、このドラマが最終的にどれだけインパクトのあるものになるか察していた?

ジェニファー: 一番初めに Showtime からアプローチがあった時は、どれほどのインパクトを持つドラマなのか知る由もなかった。アイリーン・チェイケン (Ilene Chaiken) とローズ・トローシェ (Rose Troche) の二人と話をしてわかったことは、重要でとても奥深いキャラクターだということ。(仕事を決めるときに)常に気にするのはキャラクターのことだけど、演じるキャラクターがゲイであるということについては全然考えもしなかったわ。もちろんのことだけど、シーズンを追うごとに段々とどれほどのインパクトがあるものかわかってきた。

(そして話題はオーディションの時のことへ。)

ローレル: ティナ役のオーディションに行った時、初めシェーン役のトライアウトをするように言われたのよ。えーっ!と思ったけど、ランディ・ディーンのようなつもりでベストを尽くしてやったわ。でもまったくかっこいいと思えなかった。そしてそのあとティナのトライアウトに挑んだのだけれど、きまり悪いオーディションだった。というのは、ティナがどんな風なキャラクターなのか、その時点でまだはっきりとわかっていなかったから。ティナは最初はもっとアグレッシブで計算高いといったようなキャラクターとして描かれていたの。その後、ローズ・トローシェの指導ミーティングのようなものに参加するように言われ、“カップルの二人がBettinaという同じ名前のシーン” をやってみなさいと言われた。“二人して同じ名前で、どうしてBette と Tine という二つの短い名前にしたのか。そのほうが簡単だから・・・”、という実に変なシーンをだ。(ファーストネームが同じカップルがいかに多いかということを示唆している。) それで、あらら、私は大根役者だと思われているにちがいないと思った。でもローズ・トローシェが、「素晴らしい! この役はあなたにうってつけ。でなきゃ、こんなトライアルしないもの。いつでもあなたらしくいなさい。」 と言ってくれた。 それでその後、アイリーンとShowtimeのお偉方さんたちがずらりと座っている重要なオーディションにでたの。それから少し経って電話をもらい、配役を決める前にローレル役の最後のトライアウトをするからと言われた。ローレル役がスクリーン上でのパートナーと対面して、ふたり一緒の場面でどう見えるか、どう作用しあっているかということを確認するトライアウト。そう、そこで、相手がジェニファー・ビールスだってわかったの。

ジェニファー: ティナ役の候補者数人と対面するトライアウトをするからと電話を受けたのだけれど、ちょうどわたしが映画の撮影に入っていた時だったので、候補の女優の方たちにわたしのいる撮影現場に来てもらってトレーラーの中で会うようにトライアウトは準備されたわ。一番最初の女優が到着して、トレーラーの中に入っていく前に、“中には大きい犬がいて怖そうに見えるかもしれないけど、落ち着いていれば犬も落ち着いているから全然大丈夫よ” と、一応説明をしたのだけれども、彼女は中に入って犬を見るなり怯えて叫び声をあげてしまったので、犬をトレーラーの中のまた別のところに閉じこめておかなくちゃならなくなったの。すると彼女は、「なんでこんなことやらなくちゃならないの。こんな馬鹿げたこと!」 みたいなことをブツブツ言ってた。でもその女優さんのためにできるだけのことはしたのよ。だって彼女は大変そうだったし、いつの日かもし自分が同じような状況になった時には、その相手の人にもう少しだけチャンスを頂戴とお願いしたいだろうからと思って。しかしどちらにしろうまくいくはずのない女優さんだった。例えばこんなことがあって、彼女がどこの大学行ったのかと訊いてきたので、イエール大学よと答えたら、彼女は傲慢そうに、(面白おかしい声を真似て)「あらそう、わたしはハーバード大よ。心理学を学んだわ。」と言ったのよ。あぁ、何も学ばなかったのねと思ったわ。

ローレル: ジェニファーに会いに行く前はものすごく緊張していた。主人が車で撮影現場まで送ってくれて、「君なら大丈夫だ!」と言ってくれたわ。ジェニファーのトレーラーに着くと、中に入る前に犬のことを説明してくれたので、落ち着いているようにしたら犬も落ち着いてくれていて、当然のことながら犬のテストは合格。それから話し始めたのだけど、わたしがまだ結婚したばかりだったので、結婚式のことやそういった時期に人生で起こるようなことについて話したりした。その時、お互い話していてとても心地よかったし、ぎこちなさなんてまったくなかったのよ。

この時の二人の会話は、あとでアイリーンや関係者が二人の相互作用がどのようだったか見れるように録画されていたという。

ジェニファー: そしてその後、プロデューサーと話しをした時に自分の気持ちを言ったのよ。「that's my vote! (わたしは彼女に1票!)」(そこにいるローレルを指差しながら) ってね。だけどまぁ、実のところもう一人の女優にとって大変さは公平でなかったかもしれない。だって、彼女は明らかにナーバスだったし、おそらく彼女自身どうしていいかわからなかったのだろうし。

ローレル: その女優はあとになって、「ローレル役に決まらなくてよかった。あんなにたくさんヌードになるなんて居心地悪いもの。」なんて言ってきたわ。

満足げな笑みを浮かべたローレルは実にキュートでこう言った。「そして6年経ったわ。」

Q: 撮影最後の日はどんな感じでしたか? 撮影が終わったとき、キャストとして一緒に何かしたの?

二人は、すべての撮影が終わったのは同じ時ではなく、ローレルはジェニファーより先に終わったと言った。“打ち上げパーティ” のようなものは、パーティというほどのものではなかったけれど、みんなして酔っぱらったら、状況が身に沁みてきはじめたのだそうだ。Q&Aコーナーのこの時点でこの話題に触れたことで、ジェニファーとローレルに様々な思い出がよみがえってきているのが見てわかった。そしてジェニファーが、目に涙をためて、「まさに今、これで終わったのだとしみじみ感じてしまう。なんだかお別れのような感じね。」と言うと、ローレルの方を向き、「ローレルは演技においてものすごい怖いもの知らず。そして最終的に相手役によりよい演技をさせてしまうところがある。」と付け加えた。これに対してローレルは、「それはまさに、わたしがジェニファーに対して思っていること。」と言った。

そのあと、ジェニファーは、本当に泣き出してしまった。そして、「最高のパートナーだったわ。“ありがとう” さえも、まだ言う機会がなかったわね。」と言った。ローレルの顔が泣き顔になっているのがわかった。ジェニファーが立ち上がり、そしてローレルも立ち上がり、二人はお互いをしっかりときつく抱きしめあった。ジェニファーがローレルの首の向こう側に顔を隠すようにすると、ローレルもジェニファーの頭にキスをし、お互いなぐさめあった。 以上が、土曜日に行われたQ&Aのレポート。お察しの通り、会場はこの時立ち上がっての大喝采で、このステージでのシーンを見ようという情熱と感情ははかり知れないものだった。ジェニファーとローレルは二人とも見事に今の気持ちをファンと共有しようとしてくれて、その場に参加できたことは実にラッキーだと思った。

Photo: Thanks to tibette.com

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